「想(そう)―!」

朝、駅までの道の途中の十字路で、元気な声をかけられた。

毎朝、この辺りでキミと合流する。

「おはよ、美結(みゆ)」

「おはよう。想は今日も元気だね」

この、優しい目元といつもにこやかな口元をしていて、撫でる度にいい香りのする柔らかい長い髪の滅茶苦茶可愛い子が、僕のライバルの塚原美結(つかはら みゆ)。

小学生までは同じくらいの身長だったけど、僕が中学から三十センチ伸びたから、美結のことを今は小さく感じる。

今では、僕が美結の頭に手を置いて、怒った美結が腕をぶん回すのがいつもの光景の一つになっている。

そのたびに、『想ばっか成長して!』と理不尽にも僕が怒られる。

美結は怒っていても可愛いし、僕にしか怒らないみたいだから、ある意味役得だけど。