(………好きだ、)



また、心の中で呟いてしまった。



「おい、もうワッフルねぇのかよ?」



そんな俺ー伊藤 大也(いとう だいや)ーの視線の先に居る人ー高杉 琥珀(たかすぎ こはく)ーが、誰ともなしにそう声を張り上げた。



リビングには俺の他にも数人居るのに、皆が皆聞こえていないふりを決め込んでいるから。



「えっ?あるよ、食べたいの?」



塩対応に磨きがかかっている琥珀に睨まれるのを覚悟しながら、俺はそう口を開いた。



「当たり前だろ。あの店の食べ物は美味いからな」



「あの店の店員さんには文句しか言わないけどね」



(ほら出た、よく分かんない褒め言葉)



彼の褒め言葉の対象にいつか俺もなりたいな、なんて叶わない夢を頭の中にちらつかせながら、俺は冷蔵庫を覗き込む。



その瞬間、



「“パパの手料理”のワッフル美味しいから、俺にも」



「僕の分も余ってるよね?」



「私も欲しいなー…なんて」



信じられないスピードで、3人の男女の声が聞こえてきた。



「…はいはい、全員プレーンね」



そう言った俺の声に被せて、



「やっぱ“パパの手料理”って店の名前、ネーミングセンスカスだよな…」



口癖の如く投下された、琥珀の批判の声が聞こえる。