シアター アートのお盆興行は連日盛況だった。

 AV紛い(男女の絡みがメイン)のハードな出し物目当ての客がかなり多く来た。

 客席の空気が何時もとまるで違っていた。

 暗く鬱屈した重々しさ……

 訳も無くそんな事を思ったりした。

 元々、僕自身はその企画には反対で、正直、劇場の雰囲気にそぐわないと考えていた。

 だが、経営者サイドはそんな事より数字が問題だった。

 乗り気のしない初日を迎えたのであったが、いざ蓋を開けてみれば、最終回迄立ち見が出る程の入りに不満を押し止めるしか無かった。

 それと、僕の気持ちを上向きにさせてくれた要因の一つに、出演者達のステージがあった。

 メインの姿月は勿論の事、他の出演者達の出来も、照明をやっていて飽きる事が無かった。

 休憩無しでこのままぶっ続けで仕事をしてもいいとさえ思った位だ。


 シアター アートの照明は、前にも書いたが、全て手動だ。

 舞台で踊るストリッパー達のステージも、その時々で微妙に変化するように、僕の照明も変化して行く。

 特に素晴らしいステージに出会うとその傾向が顕著になる。

 踊り子達の動き、表情を一瞬たりとも見逃すまいとする。

 時に、舞台上の踊り子本人と終始視線が合う事がある。

 僕の方は当然踊り子そのものを見つめているが、踊り子自身は決して僕を見てるのでは無い。


 光りを見ている。


 光りの中に入り込む己自身の姿をそこに見つけ出そうとしている。

 光りは、彼女達にとっての最も引き立たせる衣装であり、宝石なのかも知れない。

 そう気付き、思えるようになったのは、更に暫く後の事になるのだが。


 話しを戻す。

 初日が終わり、舞台裏を掃除しに行くと、トリのステージを終えた姿月が自分の衣装を片付けていた。

「お疲れ様でした」

「お疲れ様!」

舞台の上で演じている姿月とは別人の彼女が居た。

「あのね、中日替えとかしたいんやけど、かまへん?」

「ええ、構いませんよ。是非お願いします」

 彼女は僕の言葉に微笑んだ。

 汗が眩しく見える。