「おーい、真於(まお)ー!早くしろー!おいてくぞー!」

「ま、待ってよ、隆之(たかゆき)!」

自分の心臓がドキドキしてるのが、身体中の振動から伝わってくる。

公園の広い野原で、先を走る隆之の後ろ姿を見ながら、流れる風の心地よさを感じる。

顔が火照って、暑くて、走ってるときの草のはねかえりが痛くて。

五才の暑い夏の日。

水筒を忘れて水分をとっていないから、喉はカラカラに乾いて、苦しかった。

新しく買ったばっかりの白いワンピースが、泥で汚れていく。

私は風で飛ばされそうになった麦わら帽子を押さえて、前を見る。

そこには、手が届きそうなところに、幼馴染の隆之がお日様みたいな笑顔で笑って足踏みしている。

私は、この一瞬が堪らなく好きだった。