修さんと一緒に実家を出た私は、修さんの運転する車の助手席で移りゆく景色を眺めていた。時刻は十五時前。

高速道路を走ること一時間半。ようやく高速を降りたと思ったけれど、どうやら家に向かっているわけではなさそうだ。

「どこへ行くんですか?」

「着いてからのお楽しみ」

そう言われてしまっては、聞きようがない。

たどり着いたのはどこかの地下駐車場。一旦車を停めて、ここから歩くようだ。

隣を歩く修さんは昨日同様スリーピーススーツで、ハイブランドのブラウンベージュの革靴を履き、爽やかに笑っている。どこからどう見ても紳士だ。

対する私はベージュのワンピースにムートンブーツを履いて、黒のダウンを羽織っている。

歩いてすぐの都内の一等地、一番目立つ場所にそのホテルはあった。

「ここ、ですか?」

大きくてきれいな建物。『Shino Hotel』と英文字で記してある。観音開きの扉はガラス製になっているけれど、外からだと中は見えない。

「行くぞ」

「え、あ」

腕を引かれてホテルの中へ。扉はドアマンによってスッと音もなく開かれた。超一流ホテルを思わせる静かなロビー。

グランドピアノが脇に置いてあり、一部ステンドグラスになったところから眩しいほどの光が降り注いでいる。

奥へ進むと一階にはブティックや革製の物を取り扱うお店が並んでいた。

修さんは迷うことなく、まるでホテルの中を知り尽くしているように歩いて、ブティックの中へと私を連れて行く。

洗練されたエレガントでおしゃれな空間が広がっていて、ゆったりとした店内にはフォーマルなドレスがたくさん並んでいた。シンプルなものからゴージャスなものまでジャンルは様々だ。

「篠宮様、本日はお越しいただきありがとうございます」

従業員が一列にビシッと並んで頭を下げる姿に、私は内心ギョッとした。

「彼女に合うものを一式揃えてくれ」