あけっぴろげになっていたリビングの大きな窓から覗く夜景は、今日も最高の輝きを放っている。

ちょっと緊張した面持ちで窓際に立っていると、背後に人の気配がした。ゆっくり振り向けば、そこには両手にワイングラスを持った篠宮先生がいて、私に片方のワイングラスを差し出した。

「ありがとうございます」

まじまじ見ると、それがひとつ数万円もする高級ブランドのワイングラスであることがわかる。

落とさないようにしっかりと両手で握って、口へと運んだ。

「あ、美味しい」

部屋の照明は薄暗く暖色のオレンジ色。優しいクラシック音楽が流れていて、なんともいえない雰囲気が漂っている。

慣れているのかな。だって、篠宮先生はものすごく余裕があるように見える。私だけがこの空気にそわそわして、落ち着かないみたい。

「そんなに警戒することないだろ」

「篠宮先生は余裕がおありなんですね。わ、私は緊張しちゃってダメです」

「緊張?」

「先生のこと……少なからず男性として意識し始めてきたから」

顔を見て言えるほどかわいくない私は、両手で握ったワイングラスに視線を集中させる。

心臓がドキンドキンと脈打ち、気を抜くと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。