正式に本人から言われたわけでもないのに、その日から学園中の生徒に私たちは恋人同士だとなぜか認識されてしまった。

付き合っていないと何度も否定しているけれど、周囲には生温かい目で見られてしまっている。


七月に入り気温はグングン上昇して、蝉の声は日増しに激しくなり、夜も寝苦しい日が続いている。

期末テストが今日やっと終了し、休みと答案返却、補修や特別授業などが終業式の日まで続く。既に皆、夏休みに向けて浮足立っている。


「ナナ、氷室くんが迎えに来てくれてるよ!」

クラスメイトが帰り支度をしている私を呼ぶ。


教室の扉付近を見ると、柔らかな表情を浮かべる雪華の姿があった。

小さな顔に長い足、細い腰には暑かったのかセーターが巻き付いている。

期末テスト明けだというのに疲れている様子はまったくない。


外見も極上ながら、成績も優秀な雪華は楠本くんと特進科トップを常に争っている。

特進科は授業時間も長く、内容も難しいうえに現実逃避をしたくなるような課題と宿題の量だとよく噂になっている。

試験範囲も広く科目も多いため勉強が大変だというのに、期末テストの直前まで雪華は図書室で私に勉強を教えてくれた。

迷惑になるからと何度も辞退したけれどどこ吹く風で、この人は一体いつ自身の勉強をしているのだろうと疑問だけが残った。