第9章




捜査1課 堺マコト
********************************************


“ガチャリ”


東京拘置所の面会室。

アクリル板を隔てた扉の向こうから、
渦中の人物 西平ヤスシが現れた。



「・・・・誰だぁお前?」


「覚えてないのか?捜査1課の堺だ。」


「・・あぁ・・・思い出した。今度は班長さん自ら乗り込んできたのかぁ?」


「裁判であれだけの啖呵切ったくせに、

何一つ喋ってくれないからこっちも調べ直させてもらった。」


「・・・・・・・・。」


「お前の事を知っている人間、
お前の姿を見たことがある人間。

把握できる範囲で聞き込みを続けているが、

女性を連れていた・・あるいは女性の影を匂わせる証言は誰一人として出ていない。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「どうして嘘をついた?」


「嘘じゃない。黒部リカは俺の手によって今も監禁し続けている。」


「少なくとも2016年からお前の身柄は警察が拘束した。

そんな状態で、何を以て今も“彼女を監禁”と断言できる?」


「・・フッ・・フッ・・誘導尋問のつもりか班長さんよぉ?

俺の言ってる事が嘘だと思うなら、
根拠を示せよ?」


「・・・・・・・・・・。」


「次の公判日がまだ伝えられていないって事は・・・

お前らも検察もまだ、

“黒部リカを誘拐したのは嘘だ”と言い切れないんじゃねぇのかい?」