間違いない。スラリと長身で大きな剣を背負ったその姿。
 昨日は暗くてよくわからなかったが、思った以上の美人さんだった。
 おまけに出るところは出て引っ込むところは引っ込んだナイスバディ!
 そしてその短い髪は燃えるように真っ赤だった。

(かっこいい……!)

 洋画にでも出てきそうなその美麗な姿に私は思わず見惚れてしまった。
 と、彼女が自分を睨み上げる男に向かってゆっくりと口を開く。

「私はムサイ男としつこい男が大嫌いなんだ。私の視界から今すぐ出て行け!」

 一喝する彼女。
 その低い声は横にいる私まで逃げ出したくなるような迫力があった。

 男は一瞬怯みかけたが、自分に向けられたいくつもの視線に気付いたようだ。

「見てんじゃねぇ!」

 八つ当たりとしか言いようが無いセリフを吐いてから、目の前の彼女に視線を戻す。

「いい気になってんじゃねーぞこらぁ! その綺麗な肌に傷つけられてーか!?」

 あろうことかその男は腰から剣を引き抜いて彼女にその切っ先を向けた。

(ちょっ……!)

 思わず声を上げそうになる。
 遠巻きに見ていた町の人々からも非難めいたざわめきが起こった。

 だが剣を向けられた当の彼女は眉一つ動かさない。
 その鋭い視線に、やはり男の方が迫力負けしているように見えた。――と、

「やめておけ。お前が敵う相手じゃねぇぞ」

彼女の後ろからのっそりと現れたのは昨夜の店主だ。

 しかし額にびっしりと脂汗を浮かばせた男はその顏を真っ赤にして叫んだ。

「こっ、このまま引き下がれるかあぁ!!」

 そのまま剣を振りかざし彼女に向かっていく。