ラグとは対照的に笑顔を微塵にも崩さないエルネストさん。

「相変わらず口が悪いね、君は」
「うるせぇ! 早くオレを元に戻しやがれ!」

 一方的に怒鳴り散らすラグ。
 私はハラハラしながらそんな二人を見守ることしか出来ない。

 ――わかったのは、二人はやはり知り合いであったということ。

「ほら、君がそんなに怒るから彼女が怯えているじゃないか。女性には優しくしないと嫌われるよ」
「ふざけるな! テメェのせいであれからオレがどんな思いをしたと……」
「だから約束しただろう? 彼女を連れて来てくれればその呪いは解いてあげるって」

 子供を優しくなだめる様に言うエルネストさん。

「え?」

 私は小さく声を上げていた。

(それって、どういう……)

「オレは約束なんかした覚えはねーんだよ! テメェが勝手に……」
「なら君は、ずっとあの場所にいたかったのかい?」
「!!」

 ラグは急にグッと押し黙り、悔しそうにエルネストさんを睨み上げた。
 そんなラグにふっと笑いかけ彼は続ける。

「君は今こうして自由だ。僕に感謝してもいいくらいじゃないか」
「これのどこが自由だ!」
「まぁいい、君はちょっと黙っていてくれないか? 僕は今彼女と話したいんだ。僕にはあまり時間がないからね」

 そうしてエルネストさんのエメラルドグリーンの瞳が再び私の方に戻ってきた。

「あれからずっと大変だったみたいだね。足は、大丈夫かい?」
「え?」

 言われて血の滲む足のことを思い出す。