フランスの首都・パリ。ヨーロッパの主要都市で、アート、ファッション、カルチャー、グルメの世界的な中心地。

パリの大通りの道を、黒髪の女性が走って行く。パステルカラーのトップスに、ふんわりとした白いスカート。額に汗を滲ませながら、女性は走って行く。

「あの子、日本人かな?」

「へぇ〜。かわいい子だったね」

フランス人男性たちがそんなことを言っていたが、女性は立ち止まることなく走り続ける。

女性の名前は花園夢芽(はなぞのゆめ)。パリに住んでいて、ファッション関係の仕事をしている。

仕事が終わると、夢芽は時間があればすぐに行く場所がある。

花が飾られ、水色の外見がかわいらしい小さなカフェ。店名はR。

「Bonjour!(こんにちは!)」

そう言い夢芽が白いドアを開けると、新しく買ったばかりのパンプスが段差につまずき、派手に転んでしまった。

「いった〜……」

思わず夢芽の口から日本語がもれる。カフェの店内はざわつき、「Estーce que ca va?(大丈夫?)」という声が聞こえてくる。