4月の終わり、僕達の手配していた新しい測定器が納品された。加工実験室の奥にある測定室のさらに奥、風防に仕切られた個室にその装置は搬入された。
 この装置のメインオペレーター兼管理者は咲さんだ。今日も彼女は独り測定室に籠もって、僕の加工したサンプルを測定するかたわら、他にも様々なサンプルを測定し、測定器の評価シートを作成している。

 居室のある中央棟と少し離れたところにある実験棟の1階、半地下になった実験室が僕らの仕事場だ。365日24時間、摂氏22度±1度、湿度50%±5に保たれ、清浄度は加工室でクラス20000。測定室は5000。窓もなく日光さえ届かない、宇宙船の中にも似たこの空間で、僕らは日々実験を繰り返す。