ふと目を覚ますと見慣れない天井が目に入り、私は辺りを見渡した。どこかの病院のようだ。

「……私、帰って来れたの…?」

「そうみたいだな」

隣からふと聞きなれた声が聞こえ、私は隣を見た。隣のベッドには義昭が寝転がっている。

「な、なぜ義昭が!?」

私が叫ぶと、義昭は起き上がって「…俺、この近くで事故に巻き込まれた」と言った。

あれ?いつもなら、うるさいっていうのに。

「……天翔命。天の本名だ。天は自分の命を引き換えに相手の願いを叶える力を持つ。ただ、天が言っていたように10枚程度の句を詠む必要があるらしい。理由は知らん」

「そんな…だから、あの時泣いていたの?」

「……色葉に事前に言っておくべきだったかな。すまん」

私は義昭の話を聞いて考えていた。なぜ義昭が天くんのことを話さなかったのか。そんな疑問、すぐに分かる。

「謝らないで。義昭は、私のことを思って言わなかったんでしょ?私がそんなことを、あの時から知っていたら…きっと帰りたくても、永遠にあの江戸時代にいることになってたと思う。天くんに別れを告げられなかったことが心残りだけど…」