それから二日経った金曜日。まだまだ要領が悪かったり慌てたりするときもあるけれど、だいたいの仕事には慣れてきた。

 仕事内容は蓮斗に聞かされていた通り多彩だ。社内メールで、開発担当者から「類似のアプリがないかウェブストアで検索してほしい」とか、「特許庁のウェブサイトで特許公報を調べてみて」とか頼まれることもあれば、電化製品専門店街にデバイスの部品を買いに行くよう頼まれることもある。また、「このアプリで遊んで感想を聞かせて」といった半ば遊びのような仕事もあって、なんでも屋のアシスタントという感じだ。

 仕事も楽しくなってきたが、今日は詩穂のために歓迎会をしてくれるのだ。同じビルの五十階にあるイタリアンレストランの大部屋を貸し切っているという。

「詩穂ちゃん、仕事終わった?」

 前のデスクから真梨子に話しかけられ、詩穂は作成していた文書を保存して顔を上げた。

「はい、終わりました!」
「みんなはどうかな~、終わったかな~」

 真梨子は入り口に置かれたソファの方を見た。一部の開発担当者がゲームアプリを盛り上げるための演出アニメーションの企画を話し合っているところだ。