ある日の夜、幼馴染の志保、男運のない由紀子、先日婚約を発表して塩谷から佐野に名字が変わる伊織の3人は、半ば強引に恵巳の部屋に押しかけてきていた。

「ちょうど3人で飲んでたんだけど、恵巳の婚約者の話になって。同窓会の時にちらっと見たじゃん。あの顔イケメンだったなーって言ってたら、伊織が見覚えある顔だって言いだしたの。

それで手分けして探してたら、日本歴史博物館の館長じゃないかってところに行きついたのよ。でも、恵巳の婚約者の顔見たの1回だけだし、夜ではっきり見えたわけじゃないし、皆酔っぱらってたから確証が持てなくて。

モヤモヤしたままじゃ寝れないから、こうして確認しに来たってわけ」

「私、宮園さんを見かけたことあるから自信あるんだけどなー。恵巳ちゃんの婚約者って、宮園拡樹さんだよね?」

遅くに家を訪ねてきた3人に、一体何事かと思っていたら、同窓会で起こった騒動の続きをしようというのだった。

ついに出てきてしまった拡樹の名前。伊織の確信めいた口ぶりに、恵巳は観念した。

「そうだよ。間違ってない。

でも、このことあんまり言わないで欲しいの。その、いろいろと事情があるから…」

上手いい訳が思いつかないなと考えていると、それまで黙っていた由紀子ががっちり両手を握ってきた。

「言いふらしたりしないわよ!そんなことするはずないじゃない!私たち友達でしょ?

それより、自分だけ幸せになろうなんてことも考えてないわよね?私にだって、男性紹介してくれるわよね!」

いつにも増して鬼気迫る由紀子の様子に恐怖すら感じる恵巳。