今日も来館した人数は5人。
しかも全員近所の顔見知り。

5人ともリタイア組で、毎日時間を持て余している。その時間を使って、父親と喋りに来ているようなものなのだ。

「この調子じゃ、いつまでたっても歴史博物館に太刀打ちできないよ」

何か良い案が浮かばないかと、白紙のメモをペンで叩きながら頬杖をつく。
このままでは、どんどん差が広がっていくばかり。そんな焦りが余裕をなくしていく。

そこにまた1人、新たな訪問者が入ってきた。

「おい!これ見てみろよ!
今日発売の雑誌にあの宮園がいる!」

「なに、いきなり」

雑誌のとあるページをバシバシ指さしながら、その場にいた全員に広げて見せるのは、驚きを隠せずにいる蓮。
言われるがままに雑誌に目をやると、「輝く若手経営者」の文字。
そして、拡樹のスマートな佇まいの拡樹が写っている。

「大人気の博物館を経営しているイケメン館長とかって書いてあるんだけど!
あいつ、どこまで調子乗ってんだ?」

雑誌に載る拡樹に対して悪態をつく蓮。
爽やかな笑顔を見せるそのページを、さっきからペシペシと攻撃している。