◇◇◇

(うーん……ん?)

休日の寝すぎた朝のように、ぼんやりと目を覚ました美奈は、白い天井を見た。

壁も寝かされているベッドのリネンも白く、倒れた後に病院に運ばれたのかと思ったのだが、なにかがおかしい。

よく見れば、天井には白い塗料で魔法陣のような模様が描かれており、枕元には水晶玉や鏡など、呪術に使われるような飾り物がたくさん並べられている。

ベッドの両サイドには、外国人風の中年の男女三人がいて、そのうちのふたりがシクシクと泣いていた。

彼らは美奈が目を覚ましたことに気づいていないようである。

恰幅のいい体に、深緑色のジャケットを着て、赤茶の癖毛の短い髪に口髭を生やした男が、片手で目元を覆って言う。


「まさか、十八の若さで死んじまうなんて……」


呻くような彼の言葉に、「力及ばず申し訳ない」と残念そうに応えたのは、不思議な格好をした男だ。

真っ白な法衣に、奇妙なデザインの宝石のついた帽子を被り、沈痛な面持ちで目を伏せている。

彼らの話す言葉を美奈は難なく理解しているが、どうも日本語とは違う気がしていた。


(ここはどこ? どうして見知らぬ人たちが、私を囲んで泣いているの?)