まるでスローモーションだった。


世界が反転して、ぽっかりと雲が浮かぶ青空が、目の前にみえた。


突き飛ばされた肩に、手のひらの感覚が強く残っている。


耳をつんざく衝突音。目を閉じたその一瞬。私は、地面に叩きつけられていた。


痛みに顔をしかめ、傷だらけの腕をかばいながら這い上がる。


……いない。
……隣にいたはずの蓮がいない。


突っ込んできたトラックの下を見て、どうしてみんな悲鳴をあげているの?


……蓮、蓮?

そんなところに、絶対にいないで。


震える足で駆け寄ると、そこに蓮がいた。



ひしゃげた車体。どんなに力を入れても……びくともしない。動いてよ……。
蓮の体の上から早くどいてよ……!


そんなことしたら……蓮が死んじゃう……!


……助けて、誰か。