ケータイ小説 野いちご

その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―

過干渉な部下
I



「そうね。ほぼ問題ないと思うけど、最後のページにもう一部資料を付け足した方がいいと思う」

秦野さんにチェックを頼まれた取引先との打ち合わせ資料に目を通しながら、デスクに片肘をついて額を押さえる。


「この前のミーティングで碓氷さんに見てもらった資料でいいですか?」

「基本的には問題ないけど、ミーティングで指摘した箇所はちゃんと訂正した?」

デスクの向こうに立つ秦野さんを気怠げに見上げると、彼女が気まずそうに視線を逸らした。

この反応は、訂正してないということなんだろう。


「今すぐ訂正して、退社までに資料を必要枚数印刷しておける?」

ため息を吐きながら問いかけると、秦野さんが落ち着きなく右手の指で左手の爪を撫でるのが見えた。

最近気付いたけれど、これは秦野さんにとって都合が悪いときのクセらしい。


「退社時間までに訂正するのは難しそう?」

泣き出される前に先手を打ったら、秦野さんが爪を撫でるのをやめた。


< 76/ 344 >