「大変申し訳ありませんでした。はい……申し訳ありません……」

受話器をきつく握りしめた広沢くんが何度も低く頭を下げながら電話の相手に謝罪しているのが見えて、ふと視線を止めた。

広沢くんが電話で謝罪を繰り返しているなんて珍しい。


「本当に、申し訳……」

何かあったのかと気にかけて見ていたら、謝罪の言葉を半分まで言いかけていた彼が言葉を飲み込んだ。

浮かない表情で受話器を置いたところを見ると、どうやら会話の途中で相手に電話を切られてしまったらしい。

しばらく電話を見つめていた広沢くんは、やがてパソコンに視線を向けると何かを調べ始めた。

難しい顔でパソコンを睨み続けたのちに、彼が私を振り返る。

まさかこっちを見ると思っていなかったものだから、突然に目が合ってドキリとする。

だけど、何か不安を訴えかけるような彼の眼差しに、私は冷静さを取り戻して姿勢を正した。