盗賊の住処を出発してから三日、私たちは当初の目的だったカイエンスに向けてランチワゴンを走らせていた。

すると、後部座席にいたランディが開いた窓に向かって「いい風だぜ!」と叫ぶ。

振り返れば、ランディが窓枠に頬杖をついて目を閉じていた。

そんな彼を横目に見たオリヴィエは、眉間にしわを寄せる。


「あなた、数分前にも同じことを言っていましたよ。それによくもまあ、代わり映えのない景色を飽きずに眺めていられますね。森を抜けてから、ひたすら平野しか広がってないじゃありませんか」

「ランディは森での生活が長かったからじゃないかな? 俺も同じようなもんだし、新鮮でいいよね」


バックミラー越しにオリヴィエたちを見たエドガーは苦笑いしている。


「わかってるじゃねえか、エドガー」


上機嫌なランディと呆れ気味のオリヴィエに気づかれないように、私の膝の上にいたロキは「エドガーは苦労人ね」と小声でこぼしていた。


「俺も休暇は久々だからな。こうしてのどかな景色を見ていると、戦の最中にいた日々が遠い日のことのように思える」


皆のやりとりに静かに耳を傾けていたバルドさんも唇を緩めていた。

各々旅を楽しめているようでよかった、と思いながら私はバルドさんに声をかける。