新校舎へと戻ったとき、ちょうどユウジが廊下を歩いているところだった。


「アキコちゃん」


あたしを見つけたユウジがそう声をかけて、駆け寄って来た。


まさかユウジの方から近づいて来てくれるとは思っていなかったので、あたしは動揺して棒立ちになってしまった。


「な、なに?」


緊張して、思わず声が上ずってしまう。


「今日の練習は見に来てくれる?」


「え、うん。そうだね。今日は行こうかな」


放課後の予定もないし、昨日は見学できなかったから行くつもりでいた。


「よかった。アキコちゃんがいたら気合入れて頑張れるんだ」


そう言うユウジの頬はほんのり赤く染まっている。


まるであたしのことが好きみたいな態度に、心臓がドキドキしてくるのを感じた。


「そ、そうなんだ……」


好きな人の前になると、どうしてもうまく言葉が出て来なくてもどかしい。


「うん。じゃ、待ってるから」


ユウジはそう言って教室へ戻って行ったのだった。