ケータイ小説 野いちご

雨に溺れる

side.村雨霖

 僕は今日、一目惚れをした。

 本格的な梅雨がやってきて、僕が経営するカフェに訪れるお客様は少ない。

 今日は午後から降ってしまって、お客様は常連さんが一人。

 暇なので、僕は常連の甘雨君とお話を楽しんだ。

 彼は中学生なのに、返しが鋭い。毒舌なところもあるけれど、それがいいところ。

「貞子みたい」

 甘雨君が窓の外を見て呟いた。

 女の子が一人、店先に立っている。長い黒髪の女子高生だ。あの制服は、偏差値が高いことで有名な私立のものだ。

 酷い雨のせいで髪も服も濡れている。傘がないのだろう。貸してあげよう。

 立ち上がった瞬間、僕は目を見張った。

 彼女が本を取り出した時に見えたその横顔が、とても美しいと思った。

 ただ美人なだけではない。

 高校生らしさもありつつ、可憐な佇まいも醸している。目が離せない。

 僕はカウンター下の棚からタオルを取り出し、彼女のもとへ急いだ。

「……あの、すみません」

 本に夢中になっているようで、僕を見てくれない。

 もう一度話しかけると、やっと気づいてくれた。

「すみません、気づかずに」

 ああ……声も綺麗なんだ……。

 雨にも消されることのない、明瞭な声だ。

 はっきりと認識できるほどに、心奪われた。五つ以上は年の離れている少女に……。

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