あっという間にクリフォード様が私の目の前にやってきた。

目の前の美丈夫が私の手の中のハンカチから桜色の謎の物をつまみ上げると、それは瞬く間に無色透明に変わっていった。

何のマジック?
クリフォード様の手元を見つめていると、彼は無色透明になったそれを胸元のポケットに入れてしまった。

「あなたの名前は?」

私より頭一つ分以上高い位置にクリフォード様のお顔があって頭を反らすように見上げた。

お怒りではないかとびくびくしてしまうけれど、その表情から怒りの色は見てとれない。

「秋月楓と申します」

見上げたクリフォード様のお顔は間近で見ても素晴らしいものだった。

長いまつ毛、凛々しい眉毛、鼻筋の通った高い鼻は嫌味ですらあるし、すっきりとした輪郭に余分なものは何もついていないようである。
近くで見ると、彼の瞳はブラウンではなく見たことのないような深いレッドであることに気が付いた。

「楓か。礼を言う」

クリフォード様がそう言い私の左手を取って感謝のキスをした時だった。

クリフォード様に触れられた左手から電気が走ったように何かが私の全身を駆け巡って行った。

きゃっ

小さな悲鳴が漏れ身体に震えが走る。

何、今の。

一瞬静電気かと思ったけれど、明らかに違うものだった。
私が感じたのはピリッとした痛みではなく、言いようのないびりびりっとした甘い疼きのようなものだったのだ。

驚いてクリフォード様を見上げると、彼もかなり驚いたようで目を丸くしてフリーズしている。