クリフ様が戻ってきたのはもうすぐお昼になろうかという時間だった。

「楓、楓っ!」
驚く侍女と護衛を押し退けるように入ってくるところを見ると相当慌てている。

「クリフ様どうなさいました?」
問いかけながらクリフ様の後ろから続いて入って来た人たちの顔を見て驚いた。

「お父さん、お母さん、何でここに?」

そう、クリフ様の後ろには確かにうちの放浪癖のある両親がいた。
両親も慌てている様子で取るものもとりあえず来たという感じだろうか、父の髪が一部跳ねているし、母も慌てて支度をしてきたという感じだ。

「楓、話は後だ。まずこれを飲みなさい」
父親の懐から粉薬が出され、母親の荷物からは水筒が出てきた。

促されるままに口に含むといつもの苦い味が広がり舌が痺れる。

うぇっ、まずっ。

苦みに酸味を足して少々えぐみを足した感じだろうか。
とにかく恐ろしく不味い。

母親から受け取った水筒の水らしきもので洗い流すようにごくごくと飲み込んでいくと、やや痺れがおさまっていく。

これもなんだろう。ただの水じゃないらしく、薄めたサイダーのようなほのかな甘みと清涼感がある。

全部飲むように言われて口に残る苦みを取るように飲み干した。