私立高杉宮高等学校に通い始めて3度目の春を迎え、
3度目の始業式を迎えた私、
桜子吉乃には
今、とてつもない悩みがある。


特に何か目的があったわけでも、やりたい事もあった訳でもなく、ただなんとなく私立高杉宮高等学校に入学した私は、漠然と日々を過ごす生活を繰り返してきたけれども、
流石にもう、
流石にもう、
“何もやらな過ぎた”。


もともと性根が腐りきっている私は、高校入学時から、自分から周りの人に声をかけたり、率先して授業に参加したり、部活に入部し活動したり、といった極めて当たり前の行動を一切してこなかった。


その結果どうなるかと言うと、言うまでもないのだけれど、
まず、友達は1人もできなかった。
本当にただの1人も。

次に、学力は2年の期末テスト時で、学年総数176人中、5科目の総合点数が175位という実力。
ヤバすぎる私。


とは言いつつ、
こんなやつでも、運動が得意だったり、芸術的センスが優れていたり、何か一つくらい得意なことはあるだろう、と思う心が清らかな聖人が奇跡的にいるかも知れない。

けれど、もしそのような清らかな心の持ち主の聖人ですら、呆れて果てて目も当てなくなるほど、私に出来ることは一切ないと胸を張って言い切れる(張れるほど胸すらない)。


もはや生きてていいのか?
私がいない方がみんな幸せになれるのではないか?
ゴキブリの方がまだ何かの役に立てているのではないか?
普通、こんな社会不適合者が学校に存在したら、学校側は即、退学にするものではないのか?


もう何で、この私立高杉宮高等学校の3年生の教室に私がいられるのか、退学させられずに進級できたのか、私自身も一瞬分からなくなりかけたけれども、そうだ。

そろそろ約束の時間だ。


時計の針は午後1時45分を指している。



がらがらがらと、教室の扉が開いた。

どうやら“奴”が来た。

「桜子ぉ、逃げずにちゃんと教室に残っていた事は褒めてやる。その分だと、ちゃんと覚悟は決めてきたみたいだなぁ。ちなみに、こっから先の俺との会話はよく考えろ?お前のミジンコみてぇな脳みそフル回転させて、俺の機嫌を少しも損なわねぇように話さねぇと、お前のミジンコが飛び散ることになるからよぉ。今の俺の話が理解できたなら返事してみろぉ、ミジンコぉ。」

どうやらミジンコに生まれ変わったらしい私は、人間だった頃ですら出したこともない程の声量と速度で、返事をした。


「ははははい!!!」




てか、何故、扉の横で話す?