真夜中の出勤。
正直、真壁果歩は眠気に襲われていた。
あくびを我慢することも難しい。


「ここでよくそんな気抜けますね」


嫌味たらしく後輩の加瀬に言われても、果歩は態度を改めない。


「深夜。女性。刺殺。今月だけで似た事件は四件目。犯人はいまだ見つからない。先輩、刑事としての自覚ありますか」


その説教は果歩の耳に入っていなかった。
半分意識を手放している。


そんな果歩の頬を、加瀬は容赦なくひねる。


「人の話を、聞け」


加瀬にひねられた場所をさすりながら、もう一度あくびをする。


「あのねえ。あんたと違って徹夜続きなの。眠いの」
「先輩は女性だからっていう理由でパトロールを外れているじゃないですか。それでどうして徹夜続きになるんです」


今まで起きた事件の共通点から、女性が狙われることは容易にわかる。
それゆえ、果歩だけでなくほかの女性捜査員も深夜のパトロールをしていない。


「事件はこれだけじゃないのよ、ひよっこ」
「俺、これでも三年目なんですけど」


加瀬の返答に、果歩は鼻で笑う。
加瀬はそれに少し苛立ち、さらに文句を返そうとするが、果歩は遺体のほうに歩いて行った。


しぶしぶその背中を追う。


「先輩、何かわかりますか?」