第7章


夕暮れを待って剣を盗んだ

重たい剣を引きずる姿は
風と呼ぶには悲しすぎよう





窪田 トシヤ
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「寝たか?」


「う、うん。」


「びっくりしたな。」


「うん・・・。」


「・・・・お前は凄いな。」


「・・・なにが・・?」


「自殺しようとした友達を救った。
誰にでも出来ることじゃない。」


「あの時は無我夢中で・・
よく分かんなかった。」



荒木の家はとても広い敷地だった。

親御さんに挨拶・・なんてする必要もなく、“離れ”のような場所にそのまま通される。


荒木曰く、
昔から友達とお泊まり会をする時は、

いつもここで川の字になって寝ていたんだとか・・。



「・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・。」


学校からのチサトは電池が切れたかのように、ただ黙って僕達の後ろをついてきた。

本気で死を覚悟して、
僕達に別れを告げ、

結果的に死ねなかった。


なんと表現したらいいのか分からないけど、

チサトの中では“生”という線が切れてしまったのかもしれない。


それでも畳に敷かれた布団へ横になり、

枕に顔を埋めたその体は時間の経過と共に眠りに入ってくれた。