ケータイ小説 野いちご

今、その愛を下されば ~どこまでも愛し、尽くします~

出会い


彼女を見かけたのは、本当に偶然だろう。
役員フロアで、社長と二人外回りに行くために社長室から出たところ、そこで彼女は電球交換をしていた。

新入社員も各々に配属されてすぐの頃だ。
電球交換ということは、彼女は総務部庶務課所属ということ。
小柄な体で、脚立を使ってもめいっぱいその腕を伸ばして、なんとか電球交換をしていた。

作業が終わったのか、ホッとしたように一息ついて脚立を降りていく彼女は、最後の最後で足を踏み外した。
倒れそうになった彼女に俺は咄嗟に動いて、倒れないように受け止める。

受け止めた彼女は、とっても軽く心配になる。
このまま転んでいたら大怪我だったのではと、間に合ったことにホッとする。

「大丈夫ですか? お仕事ありがとうございます。ですが、あなたでは電球交換は大変でしょう? 庶務課長に報告しておきましょう」

俺は、メガネのブリッジを上げつつ言えば受け止めていた彼女はハッとして俺から離れて、バッと頭を下げて言った。
「ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした」

そうして頭を上げた、彼女はクリっとした大きな黒目で、ふんわりと柔らかそうな緩いウェーブの肩までの髪が揺れた。

「いや、怪我がなくてなによりです。気をつけて戻ってくださいね?」

微笑んで、さりげなく彼女の首にかかる社員証を見て名前を確認する。

(総務部庶務課の平野智恵か……)


< 2/ 11 >