「……で、そのまま男にフラれて逃げ帰ってきたってわけ?」

「……はい……」



そんな出来事があってから2ヶ月後。

7月の太陽が空に登る暑い日の午後、私の姿は地元である横浜のとあるカフェにあった。



窓際の席で力なくがっくりとテーブルに伏せる私に呆れた目を向けるのは、高校時代からの友人・映美。

横浜市内で就職し結婚した映美とは、今でも時々一緒にランチをする仲だ。



いつもは仕事の話や家族の話、同級生の話などで盛り上がるランチ。

けれど今日は、失恋の傷の癒えない私を慰める会と化していた。



「ってことは、その彼が言ってた『大事な話』っていうのは別れ話のことだったんだ?」

「そう……その日の夜に改めて言われたよ。浮気してた、別れてほしいって」



すっかりプロポーズだと思い込んで浮かれていたけれど、実際彼がしようとしていたのは別れ話だったそうで。



『本当は果穂とちゃんと別れてから結婚のことも公表しようと思ってたんだけどさ。部長に話したら予想以上に広まっちゃって。驚かせてごめん』



……いやいや。謝るのはそこじゃないでしょ。

謝るべきはそもそも浮気をしていたことでしょ。

彼の言葉に心の中で思わずつっこんだ私は、予想以上に冷静だったと思う。



あの夜の会話を思い出しながらまた深いため息が出る。