『あ、えぇまじか、受かったわ』
合格発表の日、自分の受験番号を見つけて思ったことと言えばこれくらい。

行きたい高校なんてなかった。
この高校に来たのも、半分はずっと仲良くしてた葵がここの高校に行くからと、どうせなら仲良いやつがいた方がいいと思い追いかけるような真似をした。もう半分は家から近かったから。特別偏差値が高いわけでもなかったし、部活も充実してた。かと言って高校に上がってサッカーを続けるつもりはなかった。今は葵に誘われたからサッカーを続けている状態。


「〜・・・ただし、正にも0にも負にもなるので場合分けをする必要が・・・」
数分前に解いた問題を数学教師が解説する。
ただボーッと黒板を見つめる。
特別嫌いな訳では無いけど、授業は退屈。
授業にはついていけてる。苦手教科はあれど、成績も頭を抱えるほど悪い訳でもない。
我儘が通るならこんなもん全然学ばなくていい。


「そしたらアイツ水溜まり入ってさ〜」
友達と過ごす休み時間は楽しい。
よく喋る奴らに毎日毎日よく尽きないなと思いながら話を聞いている。友達とじゃれ合うのはこの歳になっても楽しいし、ずっと続けばいいとさえ思う。適当な理由で選んでしまったけれど、結果この高校に来てよかったと心から思う。きっと充実した高校生活を送っている方だろう。

だけど、それでもやっぱりどこか心にぽっかり、穴があるような気がして。
中学時代から今まで、俺は少しずつ、現実から心を閉ざしていたのかもしれない。
黒い部分が、日に日に大きく広がっていくような、そんな感覚。

ただ適当にやり過ごす日々だ。