この町へ入って風にあたると、死ぬ。


テレビニュースでもネットニュースでも、そんな話題で持ち切りになってしまった。


驚くことに、この現象が起こっているのはこの町だけのようなのだ。


「どうしてあたしたちがこんなことに……」


椅子に座っていることも疲れて、床に直接座った状態で恵里菜が呟く。


「わからない……」


あたしはそんな恵里菜の手を握りしめた。


幸いにも学校内は今空調が効いている。


だから窓をすべて目張りしても、平気でいられた。


だけど、これだけ町が崩壊していればいつ電力が途絶えるかもわからなかった。


「俺は死体と一緒にいるなんて嫌だぞ!」


不意に、1人の男子生徒がそう言って立ち上がった。


その声に全員の視線が浩二へと向かう。


遺体をどうすればいいかわからなくて、結局同じ場所に寝かせたままになっているのだ。


「そんなこと言っても、外には出られないじゃん」


あたしの隣に座っていた敦美が、顔をしかめてそう言った。