すやすやと寝息をたてるシーゾーを抱きしめているアーシェリアスは、背後の白いホロの下に座るノアのあくびを聞いて振り返った。


「寝ててもいいよ? 昨夜はあまり眠れてないでしょ?」

「そうなんだけど、せっかく旅に出れたんだもん。景色とか楽しみたいじゃん?」


答えると、ノアはカラカラと車輪の回る音を聞きながら、街道沿いののどかな風景を眺める。


夕霧の崖から戻ったノアは、母親に心配をかけたことを謝り、捜索にあたっていた自警団にも頭を下げた。

そして、家に戻ろうとした母親に告げたのだ。

アーシェリアスたちと共に旅に出たいと。

アーシェリアスは反対されるだろうと思っていた。

大事な娘が旅に出るなんて危険だからだ。

自分の父もそうだったから。

しかし、ノアの母親は予想の斜め上をいった。


『素敵ね! お友達と旅ができるなんて最高じゃない!』


人生は一度きり。

自分で考え責任がとれるなら、好きなように生きるべきだというのがノアの母親の持論らしく、アーシェリアスはそれを聞いて激しく同意した。

旅に出ることになったのはそれからすぐだ。

そして、有力な情報が得られたのも、とりあえず学者の街と名高い【エスディオ】へ向かい、幻の料理に関しての情報を集めようとシュタイルからさらに東へと進み始めた時だった。