やがてノックの音がして、応接室にイートン伯爵夫人が入ってきた。
腰のキュッと絞られた流行のドレスを着こんだ彼女は、ふたりも子供がいるとは思えぬ若々しさで、皺ひとつ見当たらない。茶色の髪は高く結い上げてあり、ケネスの姉だと言われても納得できるくらいだ。

ロザリーは慌てて立ち上がり彼女を迎え、ケネスはそれより一歩遅れてゆっくり立ち上がり、母親の手を取って迎え入れた。

「母上。紹介したい人がおります。こちらが先日話したロザリンド・ルイス男爵令嬢です」

「あなたが女の子を紹介する日が来るなんてね。これが自分のお嫁さんだっていうならよかったのに」

イートン伯爵夫人は持っていた扇を力強く握りしめる。めり……と小さな音が聞こえて、ロザリーは慌てた。

「あのっ、ロザリンド・ルイスと申します。突然の訪問、どうかお許しください」

「あら、いいのよ。息子から話は聞いています。アイザック様のいい人なんですって?」

「い、いい人って」

かあっとロザリーの顔が真っ赤に染まる。
イートン伯爵夫人はふっと相好を崩し、ロザリーにソファに座るように促し、照れているロザリーを生温かい目で見つめた。
その視線の意味が分からず、ロザリーはケネスと夫人を交互に見やる。
ほどなくしてメイドがお茶を持ってきて、出ていくまでの間三人は何となく黙っていた。