夜会から、三日が経ったある日。離宮の応接室で、ロザリーとザック、ケネス、カイラが顔を突き合わせていた。
最高級の茶葉を使ったかぐわしい紅茶と、ザックが土産にと持ってきた王城の料理人による菓子が並べられた優雅な空間には、それに似合わない重苦しい空気が流れていた。

「それにしても、やられたな。さすがはアンスバッハ侯爵だ」

重いため息とともに、ケネスがつぶやく。

「一体、どういうことだったんですか?」

あの日、ロザリーは、身元引受人がイートン伯爵と第二王妃カイラだったこともあり、割と早い段階で聞き取りが行われ、早々に離宮へと返された。
その後、詳細が教えられることはなく、ケネスとザックが説明しに来てくれるのをずっと待っていたのだ。

ザックは長い脚を組んで、背もたれに体を預けた。

「すべての調査の結果、記念硬貨の金属配合の偽造、金の着服、輝安鉱の採掘に、密輸。全て実行犯はウィストン伯爵ということになった。首謀者がいるはずだと主張してみたが、調査の全権はアンスバッハ侯爵に持っていかれてしまったので、真相はおそらく闇の中だ」

不愉快そうに髪をくしゃくしゃとするザックを横目に、ケネスも冴えない表情で口もとだけを緩める。

「分かりやすく言えば、アンスバッハ侯爵はすべての罪をウィストン伯爵に追わせて足切りにしたんだ。……うまい手だよね。まさか張った罠を逆手に取られるとは思わなかった。あの状況で輝安鉱の現物が出てしまえば、ウィストン伯爵が犯人であることは確定だし、犯人である彼が死んでしまえば、隠れた真実を語るものもいない。アンスバッハ侯爵が関連した証拠はもう出てはこないだろうね」