暑さの消えない9月の下旬。



「花火しようよ」


彼女のそんな言葉から、夜の倉庫に人が集まる。


「和佳菜ちゃんはどれがいい?」


「うーん、なんでもいいから千夏ちゃん好きなもの選んで」


この頃翔が急いでどこかから買ってきた花火セットを持ってあたしの他にも色んな人に声をかけてはキャッキャと喜んでいる千夏ちゃん。


なんだか微笑ましく思えるのはきっとあたしだけではないだろう。


嫌いだと言っていた綾は時折馬鹿にしたようた笑う。


翔も面倒臭そうにしつつ、こうやって彼女に花火セットを買い与える。


そして仁も。


「線香花火は最後にしろよ」


乗り気で花火大会に加わっていた。


その顔はなんだか子供みたいに無邪気で柔らかい。


始めは随分と受け入れられていなかった彼女だったが。


もう彼女に苛立ちの目を向ける者は少なくなっていた。