「なんだか和佳菜。千夏とすげえ仲良くなったな」



綾にそう言われた9月の昼下がり。


まだまだ暑い中、あたしは倉庫の端にある椅子でのんびりとアイスを頬張っている。

口からアイスを離し見上げて、返す。


「そう?」


「そうだ。なんかあったのか?」


「何もないけど」



何もない、わけではないけれども。


彼女と仲良くするように心がけたのは事実だ。


上手く彼女の気持ちを掴めているとは思えないけど。


少し、表情が柔らかくなったのは気のせいではないと思う。


「いいや絶対なんかあった。あの日からだろ。ほら、二人で泊まった時」


それは本当のこと。


2人でたくさん話した。


仁や綾にはあまり言えない琢磨の話も。


子供っぽい琢磨の話を聞いたら、絶対幻滅してしまうと思うから。


「本当に何もないわよ。まあ、何かあったもしても綾には言わないから」


「ちょっとなんでだよ!」


「女の子には秘密にしたいことだってあるのよ」



ふふんと笑って、食べ終えたアイスの棒を片付けにゴミ箱へ歩いた。