ピンポーンとチャイムの音が響き勇菜は足早に玄関に向かいドアを開けると、そこにはいつもと違ってピシッとした服装をして緊張した面持ちの隆矢がいた。

「いらっしゃい、隆君!」

「こんにちは。
えっと、ご両親は……」

「えーっと、とりあえず上がってくれる?」

苦笑してパタパタと小走りで先にリビングに戻って部屋の様子を見ると、ソファーでいつも通り寛いでいる陽人とキッチンでおどおどしている陽菜がいて勇人の姿は見えなかった。

「あれ、お父さんは?」

「隆矢が来るまで部屋にいるって」

「もう来たのにー。
ちょっと呼んでくる」

「俺が行くから勇菜は先に母さんに隆矢を紹介しとけよ」

立ち上がりすれ違い様に隆矢の肩を叩いて去って行った陽人を見送ってからキッチンに視線を移すと、そこにはまだおどおどしている陽菜がいた。

「お母さん、こちら俳優の一ノ瀬隆矢さん。
隆君、あがり症で人見知りだけど優しいお母さん」

「ゆ、勇菜ったら、もっと違う紹介の仕方が……あ、えっと、初めまして。
勇菜の母の越名陽菜です」

あがり症故に微かに頬を染めて、それでも娘が初めて連れてきた彼氏とあって必死に笑顔で話しているのであろう陽菜を見て、隆矢は硬直した。