話がいちいち異次元すぎてついていけない。



「辿り着くまでチョットめんどいけどな。ついてこいよ、手、離さないで」


指先をキュッと絡めると、慣れた足取りで進んで行く。


四方八方、鏡、鏡、鏡。


目が回りそう。
手を引いてくれる響平がいなかったら、抜け出すことはたぶん不可能だ。



「はーい、脱出ー」


ようやく現れた、3次元、普通の空間。

そしてここにも、黒い扉。



「暗証番号、当ててみ」

「えっ?」

「5桁」


たぶん、扉のパスコードのこと。

そんなこと言われたって。


「わかるわけ……」

「87539」

「えっ?」

「覚えやすいだろ」


8,7,5,3,9、が?



「どこらへんが覚えやすいの?」

「ひらがなにしたら、“はながさく”になるだろ」


ニヤッと笑顔が向けられた直後、鍵の開く音がした。