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「お前、この前の女か。もう来んなって言ったろ」



あの夜とは違って、いやに静かな夜だった。


さっきよりも寒さを感じるのは緊張のせいか。
それとも──この街の人の心が、冷たいせいか。


もう二度と来ることはないと思っていた。

──それなのに私は今ひとりでここへやって来て“彼” の前に立っている。



夜だというのに、やけにひと気のない繁華街。

相手の服装は、黒のスーツに黒いシャツ。

“通常”とは明らかに違う状況だと気づく。



「あ、あの、この前はありがとうございました。……、今日は街で、なにかあるんですか?」

「ああ、もうすぐ会合が始まる。今すぐ帰れ。部外者は男女カンケーなしに討ち払われんぞ」