「はい、どうぞ。
 見たことも食べたこともないパンです」

 休み明けに深月が陽太のデスクの上にパンをどさどさっと置くと、陽太は嫌そうな顔をした。

「行ったのか……」
と言う。

「行ってきましたよ。
 別に和やかでしたよ。

 思い出話なんかしながら」
と笑ったが、陽太は、ふうん、と面白くもなさそうに言う。

 デスクの上のパンの山を見たあとで、
「……何処が見たことも食べたこともないパンなんだ。
 よくあるパンに見えるんだが」
と訊いてきた。

「さあ?
 見たことも聞いたこともないような酵母菌でも使われるんじゃないですか?」

「大丈夫なのか、それ」
と言いながら、陽太は、ひとつパンを手にして胡散臭げに眺めている。