「やめろ、山の中とか襲われるぞ」

 清春と山の中のパン屋に行くと言った途端に、深月は陽太にそんなことを言われた。

「いや、そんな感じじゃなかったんですよ」
と深月は言ったが、陽太は、

「なにを言う。

 お前、最初に船に乗った日だって。
 俺のこと、あ、この人、私を襲う感じ、と思ってついてったわけじゃないだろう」
と言い出す。

 いや、結局、襲ってなかったわけじゃないですか。

 ……ねえ?

「っていうか、見たことも食べたこともないパンってなんだ」
と陽太は眉をひそめる。

「昆虫でも入ってんのか」
という彼の呟きに、清ちゃんもきっと似たようなこと思ってたんだろうな、と気がついた。