その日からあたしは文芸部の部室内で小説を書き始めた。


元は咲紀の日記だけれど、ちゃんとあたしが書いたように見せかけるため、わざとみんなの前で書き始めたのだ。


「最近の愛菜すごく調子よさそうだよねぇ」


部室へやってきた美春がそう声をかけてきたので「まぁね」と、ほほ笑む。


調子良く見えても当然だった。


もうすでに出来上がっている作品を清書しているだけなのだから、あたしの手は止まらない。


「すごいよね。本当に締め切りに間に合うんじゃない?」


明日香もそう言って驚いていた。


もちろん、締め切りには十分間に合う予定だった。


でも……。


机の下でこっそり日記を広げた時、あたしは眉間にシワを寄せて手を止めていた。


それまで順調に作品を作ってきたけれど、その先の文章を読んだ時どうしても手が動かなくなってしまったのだ。