第1話







「・スッ・・スッ・・ヤダヤダ!!

・・・スッ・・ヒック・・・・・・
・・メロンソーダ・・ヒック・・・!

アズサ・・メロンソーダ飲みたい・・。」


「・・・・分かった分かった。

その代わり!!
ポンポン壊しても知らないからねっ。」





自動販売機の前で私が泣き出すと、

お母ちゃんはいつも財布からお金を取り出してくれた。


何度も何度も120円を・・
私のワガママは惜しまなかったくせに、

“自分”に関することは笑って誤魔化していたお母ちゃん。



あの頃の私は、
“オシャレ”という言葉も、
“メイク”という言葉も、

“スッピン”という言葉も知らなかった。


だからお母ちゃんが家の中にいる時も、

外に行く時も同じ顔をしていることに違和感は何も無かった。


だからお母ちゃんが糸のほつれたセーターを着ている事も、

毎シーズンずっと同じ服しか着ていなかった事も違和感は無かった。