今日は日曜日。体育館からはボールの音とシューズの擦れる音が響いてくる。学校に来ているのは部活のある人だけ。



もう5月の半ばだ。頬を撫でる風が暖かい。日射しも相まって暑いくらいだ。



私はこの双葉高校の二年生。部活には入っていない。



じゃあなぜ学校に来たのかって? それはこっちが聞きたいくらい。
何も考えていなかったらいつの間にか校舎の前に居たんだから。



一年以上の習慣って恐ろしい、なんてぼんやりと思った。




◇◇◇




ふと気がつくと、屋上の扉の前にいた。


あれ、何でこんな所に?


……うちの学校って屋上入っていいんだっけ?


それに答えるように、手を掛けている扉には「立ち入り禁止」という張り紙がある。


せっかくここまで登って来たんだし、ドアが開かないことを確認して帰ろうか。


そんな軽い気持ちで手を掛けたドアは、




――ガ…チャン




重い音を響かせながら、ゆっくりと私を受け入れた。



え?



驚きで固まる。


少ししてから、まるで異世界に足を踏み入れるように、眩しい光の溢れる外へと身を乗り出した。



屋上って、意外と狭いんだな。


小学校の頃、何度か屋上に入れたが、その頃はまだそこには何もなく、ただただ広い場所だった。


だが今は――高校は――太陽電池やら倉庫やらで教室一部屋分位しかスペースはない。



柵もない。はじめから屋上には入らせないつもりだったのか、それとも高校は無いものなのだろうか。



遠くには山が見え、学校からその麓まで基本的に田んぼが広がっている。




――凄く綺麗。




一段高くなっている屋上の端に立つと、下らないことはどうでも良くなるくらい眼下に広がる景色は新鮮で、自然に還っていく気がした。

少しの間その感覚に身を沈めていると、



――グイッ



突然腕を引っ張られた。