「頼む、昴。……なにも聞かず、今から言う場所に芽衣を迎えに来てほしい。そのまま連れ帰ってくれないか?」

俺には、泣いている芽衣を抱きしめて慰める資格などないから。

連絡を受け、駆けつけた昴に抱きしめられる芽衣の姿を見届けて、自宅に戻った。

真っ直ぐ書斎に向かい、しまった写真を再び手に取り眺めた。

芽衣から話したいことがあるとメッセージをもらい、仕事を切り上げて帰ってきた。

もしかしたら俺にとって嬉しい話かもしれないと思い、浮かれて帰ってきた俺に突きつけられた現実に、目の前が真っ暗になった。

一生姫乃のことは、芽衣に話さないつもりだった。それなのに知られてしまい、動揺して芽衣を傷つけてしまった。

「なにやってるんだろうな、俺……」

返事など帰ってこないのに、写真に写る笑顔の姫乃に語りかけてしまう。

姫乃の願いを叶えたい。その一心だったのに、な。

今でも鮮明に覚えている。彼女と過ごしたかけがえのない愛しい日々を……。

* * *

自分に婚約者がいると知ったのは、わずか七歳の頃だった。相手は父さんの会社と取引きがある会社の社長令嬢。