ドラッグストア・アオノの本社ビルは、都内の外れにある。

五階建てのビルの一階にある社員食堂には、周辺に飲食店やコンビニがないため、昼休みとなると大勢の社員が詰めかける。

この日は外出予定がないため、私も満席に近い社員食堂の端の席で、日替わり定食を注文し、同期で総務部所属の半田玲子(はんだれいこ)と昼食を共にしていた。

「えぇっ! 結婚!? ちょっと電話で言っていたことは本当だったの!? しかも相手があの門……っ」

「玲子、一度落ち着こうか!」

大きな猫目を見開いて驚く彼女の声を遮った。

するとここが社員食堂だと今さらながら気づいたのか、玲子は両手を口で覆った。

「ごめん、まさかの急展開にびっくりしちゃって……」

そう言うとふわふわの髪を耳にかけて前のめりになり、真剣な面持ちで私に確認してきた。

「それでさっきの話は、私を驚かせようとするドッキリじゃないよね?」

「当たり前でしょ? こんなドッキリを仕掛けるわけないでしょ?」

四日前の就業後、私は門脇部長にプロポーズをされ、結婚をすることを約束した。