「ねえ」

「ねえってば」

あたしは青山の両耳から、イヤフォンを引っこ抜いた。

「……なに?」

青山はその綺麗に整った顔を傾けて、ちょっと不機嫌そうに眉をしかめた。

「音楽聴いてないで、青山もちょっとは手伝ってよ」

体育祭のポスターの色塗り。

今日中にやらなきゃなのに、一緒に実行委員に選ばれた青山は、全然やってくれない。

……まあ、最初から期待なんかしてないけどね。

ふうっと溜め息をついて、あたしはまた色塗りを再開する。


あたしは青山が苦手だ。

青山はすごくモテて、いつも女の子に囲まれてる。

こいつはやたらイケメン、それはさすがに認めざるを得ないけど。

女の子にちやほやされるのもわかるけど。

でも、お高く止まってんのかスカしてんのか、すっごいぶっきらぼうで、愛想笑いのひとつも見せやしない。

だからすごく苦手。