ケータイ小説 野いちご

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運命だけを信じてる

第3章


就職氷河期の中、アズマネクスト商事という名の知れた企業に内定をもらえたことは奇跡だった。食品業界でトップ3に入る程の大手企業だ。


夢に心膨らませて入社した。

しかし配属された【営業部 第1営業課】は最悪だった。

担当OJTの女性の先輩は、私にコピー機使い方と、お茶の出し方、簡単なパソコン操作以外はなにも教えてくれなかった。
だから営業アシスタントとして配属された私は1年経っても、コピー係、書類探しや会議の議事録作りなど、大した仕事は任せて貰えなかった。

さすがに誰かに相談しようと、第1営業課をまとめる東 夏樹(あずま なつき)課長に相談した。

東課長は、その名の通りアズマネクスト商事の社長のご子息で、営業部長も彼には頭が上がらない。


「東課長、私にもう少し仕事を任せて頂けませんか」


入社1年目を迎えたその日、たまたま同じエレベーターに乗り合わせた東課長にそう切り出した。


「おまえになにができる?」


茶色がかった瞳に、くっきりとした二重瞼。強大な目力と、抑揚のない低い声によって責められている気持ちになる。

なんでもないです、そう話を終わらせたい気持ちをグッと堪えて、逃げずに向かい合う。


「なんでもやります。やらせてください!」


「おまえの話はOJTの村井から聞いている。仕事が欲しければ、まずは基本的なことをやれ。基礎ができない奴に応用はきかん」


エレベーターの扉が開く。

素早い動作で東課長が下りて行ったので、考えなしに追いかけた。


村井さんが私のことをどんな風に報告しているかは大体想像がつく。

基礎?応用?
その基礎すら、私は教えてもらってないのだ。


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