愛果を思って作った曲は

そのままの愛果みたいに

柔らかく

曲調はとてもメロディアスで

一音一音、誠実で暖かくなった

聴いていてとても心地よく

心に響く曲になった

俺はとても気にいってしまって

作ってからは

毎朝その曲を演奏するのが日課になった

あたふた一人朝食を済ませ

パン屑の散らかるテーブルの上は

その曲を演奏するだけで

愛果との思い出に彩られて

何故だか一人の寂しさは消え

彼女への愛しさで

朝の光を再び思い起こすことができた

すると

愛果と二人で過ごした毎日が

自然に思い浮かび

あの頃、彼女と過ごしたフワフワとした

それでいて

幸せな気持ちが溢れて止まらなくなった

それは

あの頃の作曲への思いも甦えらせた

その気持ちのまま

俺は時間も経つのも忘れ

また一つ曲になりそうなメロディを

ワンフレーズ完成させた

愛果と一緒に迎えた朝

柔らかな朝の光の中

隣りに眠る愛果の寝顔を

見つけた時の

あの幸福感そのままの可愛いフレーズ

彼女が目を開けた時

この曲をどんな風にアレンジしたら

今の俺のこの気持ちが

彼女に伝わるのだろう

そう思い立つと

居ても立っても居られなくなる

俺はベットから起き上がり

楽器に向かう

サックスとパソコンを使い

この曲の作曲にのめり込んだ

気がつくと

朝の光で溢れていたテーブルの上には

赤みを帯びた夕方のかすかな光が

射し込んでいた。

それにようやく気がつくと

パソコンとサックスを操る指を

止めた。

顔をあげ

窓から下校途中の子供達の話し声を聞きに

窓辺に向かう